木へんに夏をつけると「榎」という漢字になります。
人名で見かけることの多い漢字ですが、人名以外での使い方にはどのようなものがあるのでしょうか。
本稿では、「榎」の身近な用例や、誤解されやすい点などについて詳しく見ていきましょう。
「榎」の基本情報
まずは「榎」の基本知識をお伝えします。
漢字 | 榎 |
---|---|
部首 | 木(きへん) |
音読み | カ |
訓読み | え・えのき |
日本人になじみ深い「榎」
「榎」は、木へんから成る漢字であることからもわかる通り、木の名前を意味する漢字です。
一文字でみると珍しい漢字・難読漢字のイメージを抱くかもしれませんが、日本人にとってなじみ深い漢字です。
人名で使われる「榎」
まず、「榎」は人名によく使われます。
人名で用いる場合、「榎」の読み方は「え」「えの」「えのき」のいずれかであることがほとんどです。
例えば、
榎→えのき
榎川→えがわ
榎崎→えざき
榎本→えのもと
などがあります。このうえ「榎本」は歴史上の人物名にも見られ、
榎本武揚(えのもとたけあき)→江戸時代末期の幕臣。幕府の海軍を率いて北海道に行き、函館・五稜郭で明治政府軍と戦った人物
が有名です。
エノキダケ
このほか、キノコの一種であり食材にも多用される「えのき」は、漢字で書くと「榎茸(えのきだけ)」です。
榎茸は、漢字の通り榎(エノキ)に寄生するキノコです。
実際には榎だけではなく、カキ、コナラ、ヤナギ、クワなど複数の木に寄生します。
榎茸の一般的なイメージは、白く、ひょろひょろと細長い形ですが、野生の榎茸はかさがシイタケのように広く、柄も人間の小指くらいの太さがあり、色は黄褐色です。
なぜ、市販の榎茸は白くひょろ長いかといえば、成長を早めるために光のない場所で育てるためです。
光がない場所では、キノコ類は光を求めて伸びていき、あのような形になるわけです。
「榎」は国字?
漢字は中国で発明された文字であり、日本に流入してきたため、現代の日本で使われている漢字もほとんどが中国生まれです。
しかし、中には日本で独自に生まれた漢字もあり、これを「国字」といいます。
Wikipediaで調べると、「榎」は国字であるとされていますが、厳密には国字ではありません。
中国の宋の時代に作られた漢字字典『玉篇』には、「榎」の文字がしっかりと記録されています。
そこには、以下のように書かれています。
榎は、檟に同じ(榎とは、檟のことである)
「檟」はエノキではなく「ヒサギ」「キササゲ」のことです。
これらのことを整理すると、
・中国では、ヒサギ・キササゲの漢字として「榎」または「檟」を使っていた
・日本では、「榎」をヒサギ・キササゲではなくエノキの漢字として利用するようになった
⇒「榎」は日本で生まれた国字ではなく、中国に元々存在していた漢字である。これが日本に入ってきてから異なる意味で使われるようになった。
つまり、
×:「榎」は国字である
〇:エノキの意味で用いる「榎」は日本語用法である
ということです。
Wikipediaには、このような間違った情報が掲載されていることもあるため、漢字について調べる際には注意しましょう。
まとめ
本稿では、「榎」について詳しく解説しました。
まずは、人名としての用法を覚えるべきです。それにより、日常的な利用で困ることはなくなります。
また、食材の「えのき」は漢字で書かれることが少ないものの、「榎茸」を覚えておくと榎の日本語用法を理解する助けになります。
日本語用法を持つ漢字は、難読漢字であっても日常的に利用される機会が多いため、意識して学んでいくと役立つことと思います。