手へんに句と書くと「拘」の漢字になります。
構成要素は単純ですが、一文字だけをみるとピンとこない人も多いことと思います。
本稿では「拘」を深く理解するために、読み方や使い方、意味のほか成り立ちなども解説していきます。
「拘」の基本情報
まずは拘の読み方などを見ていきましょう。
漢字 | 拘 |
---|---|
部首 | 手(てへん) |
音読み | コウ |
訓読み | かか-わる・こだわ-る |
日常的に使われる「拘」
「拘」の音読み・訓読みは上記の通りです。
このうち、音読みの拘を使った単語は日常的によく使われるため、しっかりと覚えておくべきです。
例えば、以下のようなものがあります。
【拘束(コウソク)】
自由を制限すること、束縛すること。
ex.勤務のために毎日8時間拘束される
【拘置(コウチ)、拘留(コウリュウ)】
罪人などの自由を奪い、監獄や留置場に止めておくこと。
ex.事件の容疑をかけられ、留置場に拘置される
拘束・拘置・拘留などの単語で考えると、すんなりと理解できるはずです。
拘の成り立ち
拘の意味は、成り立ちから考えるとよくわかります。
「拘」は「手+句」で作られる漢字であり、意味のカギを握るのは「句」です。
少し縁起の悪い話になりますが、本来「句」は屈屍(クッシ、死んだ人間が体をかがめて横たわっている形)を表す象形文字です。
この意味が発展して、句は曲がること全般に用いられるようになりました。
例えば、
句兵(コウヘイ)・・・先端が曲がった形の武器
句爪(コウソウ)・・・かぎ爪が曲がっている種類の鳥
などの単語があります。
また、文章を締めくくる「。」すなわち句点(クテン)も、「、」が曲がって「。」になっているため句点と呼ばれます。
手へんと句の組み合わせ
以上のように、句とは曲がっている様子を意味します。
これと手を組み合わせた「拘」は、
捕まえ(手)、身を屈する(句)ように圧力をかける⇒自由を奪う
の意味となります。
句の本来の意味をよく知ったうえで「手+句=拘」を考えると、分かりやすく、面白く学べることでしょう。
訓読み「拘」はこだわりの意
では、訓読みの「拘」はどうでしょうか。
訓読みの場合、拘は
・拘(かか)わる
・拘(こだわ)る
などの使い方が挙げられます。
「かかわる」としてよく使われる漢字には関わる、係わる、拘わるがあります。
このうち、関わる・係わるは同じ意味として通用され、意味は「関係する」です。
これに対し、「拘わる」と書く場合には「こだわり(拘り)を持つ」の意味となります。
この意味を押し広げると、音読みと訓読みの意味があまり変わらないことに気づくはずです。
こだわることは執着することであり、嗜好や性向によって自らの自由を奪っているともいえます。
この意味において、訓読み「拘」も「自由を奪う」の意味と捉えることが可能です。
こだわる意味の用例
実際の用例をひとつ見てみましょう。
朱子学の入門書である近思録(きんしろく)には、易の解釈を教えるくだりで
一(イツ)に拘(コウ)するを要せず
と書いています。
これは、「ひとつのことにこだわりすぎる必要はない(こだわりすぎると、易の応用ができなくなっていけない)」という意味であり、拘が「こだわり」の意味で使われている好例です。
まとめ
本稿では、「拘」について解説しました。
音読みの場合には拘留・拘束など、日常的によく使われる漢字であり、理解しやすいことと思います。
分かりにくいのが訓読みですが、これも基本的に「こだわり」を意味するものと考えることで、簡単に覚えられることでしょう。
漢字学習では、成り立ち、音読みと訓読みのイメージの違いなど、広い視点で学んでいくことを心がけてください。