木へんに弟と書く「梯」という漢字、皆さんは読めるでしょうか。
あまり馴染みのない漢字かもしれませんが、意外と身近なものに使われる漢字でもあります。
本稿では「梯」の読み方や意味、用例などを解説します。
「梯」の基本情報
まずは「梯」の基本情報を確認しましょう。
漢字 | 梯 |
---|---|
部首 | 木(きへん) |
音読み | テイ・タイ |
訓読み | はしご・きざはし |
「梯」は形声文字であり、弟をつけることで「テイ」と読ませた漢字です。
弟と同じであることを知れば、音読み「テイ」は簡単に覚えられることと思います。
基本の意味は「はしご」
しかし、日常的によく使われるのは音読み「テイ」ではなく、訓読みの「はしご」です。
高い場所へ上ったり、下りたりする際に使う「はしご」を漢字で書くと、「梯子」または「梯」と書きます。
ある思想家の苦学
「梯」は、物理的な昇降に利用するはしごだけではなく、低いレベルから高いレベルに達するまでの手引きや順序の意味でも用いられます。
この場合には、「階梯(カイテイ)」といった形で用いられます。
揚雄(ヨウユウ)という人物をご存知でしょうか。全漢末期の思想家で、苦学者としても有名です。
揚雄は、様々な誘惑や障害から身を遠ざけて学問に集中するため、自宅の高い位置に書斎を設け、そこに上がると梯をはずして下りられないようにし、外界との連絡を断って読書に熱中しました。
このような逸話と重ね合わせると、「レベルアップのための手引き・順序」という意味での「梯」のイメージを掴みやすいと思います。
梯の成り立ちから意味を学ぶ
「梯」の構成要素である「弟」は、brotherの意味が最も一般的です。
しかし、弟の本来の意味はbrotherではありません。
これを知ることにより、梯の理解が一層深まります。
なぜ木+弟=梯?
そもそも「弟」は、革紐で物を束ねる形を表す象形文字です。
最古の漢字字典・説文には、弟について「韋束(イソク・革紐で束ねたもの)の次弟(シダイ)なり」と書かれています。
説文に「次弟」とあるのは「次第」のことであり、弟は第の原型です。
つまり弟とは、「韋束を縛り、締める手順・方法」を意味する漢字であり、これが次第に変化して「長いものと短いもの」「年長者と年少者」「兄と弟」といった意味に発展していきます。
以上のように、弟は本来「順序」「手順」を意味する漢字です。
梯(はしご)は、木などの材料を一定間隔で、順序よく縛って組み立てていきます。
まさに、「木を弟する」ことで作られるため、「木+弟=梯」という漢字ができたと考えられています。
まとめ
成り立ちを調べると、その漢字の意味を深く理解できることが多いです。
単に音を指定するために、意味の繋がりを持たない漢字を組み合わせて作られた漢字も多いですが、意味の繋がりから作られた漢字も多いです。
「梯」の場合、弟によって音読み「テイ」を持たせつつ、さらに「順序」「次第」の意味も持たせています。このように、特定の構成要素に読みと意味を同時に荷わせる漢字もあるのです。
最初は「ややこしい」「面倒くさい」と感じるかもしれませんが、慣れてみると大変興味深く楽しいものです。
ぜひ、皆さん自身でも積極的に調べ、漢字を楽しんでほしいと思います。