「鹿」はよく知られている漢字ですが、これにさんずいをつけた「漉」は難読漢字のひとつです。
この記事では、「漉」の読み方や意味、用例などを解説します。
「漉」の基本情報
「漉」の構成と読み方は以下の通りです。
漢字 | 漉 |
---|---|
部首 | 水(さんずい) |
音読み | ロク |
訓読み | したた-る・こ-す・す-く |
「漉」は形声文字であり、構成要素の「鹿」は動物のdeerを意味するものではなく、「ロク」の音を与えるものです。
このため、「漉」には動物や鹿に関する意味は全くありません。
「漉」の意味
部首がさんずいであることからも分かりますが、「漉」は液体に関する漢字です。
「漉」には、以下のような意味があります。
- (池や沼などを)干上がらせる
- したたる
- こす
- すく
したたる、こす
この中で比較的よく使われるのは「したたる」「こす」です。
「漉漉(ロクロク)」は、汗や血がしたたることを意味する熟語です。
また、ろ過する意味の「こす」はお酒に関する漢詩などで見かけることがあります。
「すく」は日本語用法
「すく」は、紙や海苔などを作るために、水中の繊維質をすくって加工することを意味します。
髪の毛を「すく(梳く)」と混同しないように注意してください。
なお、「すく」の意味は「漉」の日本語用法です。
中国古典などでは「漉」が「すく」の意味で使われることはありません。
「漉」の用例
「漉」がどのように使われているか、漢詩を例にみてみると参考になります。
陶淵明の「帰園田居(園田の居に帰る[えんでんのきょにかえる]」は、田舎で田園生活を楽しむ心情を詠んだ作品です。
五首からなる漢詩ですが、五首目に「漉」が登場します。
漉我新熟酒 我が新熟(しんじゅく)の酒を漉(こ)し
隻鶏招近局 隻鶏(せきけい)もて近局(きんきょく)を招く
(熟したばかりの酒を漉して、鶏を一羽つぶして隣人を招く)
この漢詩では「漉」を「こす」の意味で用いています。
お酒を準備する様子を「漉す」と表現することで臨場感が高まります。
また、漉す作業を楽しんでいる情景も浮かび、お酒を愛した陶淵明の人柄も「漉」の一字によく表れています。
まとめ
本稿では、「漉」の読み方や意味、漢詩での用例を解説しました。
「帰園田居」で用いられる「漉」のように、たった一字の漢字を知っているかどうかによって、漢詩を味わいは大きく変わります。
漢字を学ぶ際には、ただ暗記するのではなく味わいながら学ぶことを意識してみてください。