草冠に戸と一文字で書く漢字「芦」の読み方、使い方、意味等を解説!

草冠に戸と一文字で書く漢字「芦」

くさかんむりに戸と書く「芦」の漢字を見たことがある、読めるという人も多いのではないでしょうか。

「芦」をあえて取り上げるのは、「芦」の微妙な意味や使い分けが非常に面白いからです。

本稿では「芦」の読みや細かい意味、使い分けなどを解説します。

「芦」の基本情報

まず、「芦」の基本をおさえていきましょう。

漢字
部首 艸(くさかんむり)
音読み
訓読み あし・よし

「芦」の訓読み「あし」は、イネ科の植物を意味します。

昔は敷物や紙などの原料に使われ、誰にとっても身近な植物であったため、和歌などで盛んに用いられています。

ちなみに、「あし」は「悪(あ)し」に通じて縁起が悪いことから、「よし(=善し)」の読みが生れました。

人名や地名で使われる「芦」

「芦」は「あし」の読みで人名や地名に使われることも多く、

・人名:ケンカ空手ともいわれる芦原空手の創始者・芦原英幸(あしはらひでゆき)

・地名:自衛隊航空基地芦屋(あしや)基地のある福岡県芦屋町、関西の高級住宅街として知られる兵庫県芦屋市

などで使われています。

「芦」は異字体

漢字には、一部の省略や写し間違いによって生れた「異字体」というものがあります。

「芦」は「蘆」の異字体です。

上記のように、人名や地名では「芦」が使われることが多いのですが、和歌などでは「蘆」を使っているケースが多いです。

異字体同士の漢字は読み方・意味が全く同じですから、「蘆」もセットで覚えておきましょう。

「芦」と「葦」

「芦」との区別が難しい漢字に「葦」があります。

「葦」もイネ科の多年草であり、生息地も見た目も「芦」となんら変わりません。

さらに訓読みが「あし」であるため「葦」も「蘆」の異字体と思ってしまうのですが、ここには微妙な違いがあります。

すなわち、

「芦(蘆)」・・・穂の完全に出ていない状態の「あし」

「葦」・・・穂が出た状態の「あし」

という違いがあるのです。

なお、「葦」を説文で調べると、「大葭(たいか)なり。葭(か)は葦の未だ秀でざる者なり」とあります。

「葭」も「あし」と読みますが、こちらは「芦(蘆)」よりもさらに未熟で、主に生えはじめの「あし」に用いる漢字です。

和歌での使い分け

「芦(蘆)」と「葦」の使い分けを知っておくと、和歌などが一層おもしろく感じられます。

「芦(蘆)」と「葦」を用いた用例を見てみましょう。

幕末の歌人・橘曙覧(たちばなあけみ)の和歌に、以下のようなものがあります。

【①芦(蘆)を用いた和歌】

枯れのこる 渚の蘆に こぎふれて

  散らしつあたら 柴ぶねのゆき

【②葦を用いた和歌】

川岸の 崩れにかかる きつねばし

  葦の茂みに 見えがくれする

①の和歌は、厳寒の時期、柴船が川を進んでいると、柴船に積もった雪が枯れた蘆に触れて崩れ散る様子を歌ったものです。

蘆というからには穂のない状態でなければなりませんが、蘆は春から夏にかけて成長して穂が出そろうため、冬の「あし」は「蘆」ではなく「葦」であるべきです。

あえて「蘆」を使っているのは、成長した「葦」が刈り取られ、背丈は低くなり、穂もなくなった状態であることを示すためです。

刈り取られて背丈が低くなった「蘆」が、舟に触れて雪を払う情景が浮かんでくるでしょう。

ここで「葦」の漢字を使えば、背丈が高く活き活きとした、まだ温かい時期の葦を連想させるため適切ではありません。

②の和歌は、川にかかった橋が、葦の茂みから見え隠れする様子を歌ったものです。

詠み手である橘曙覧の目線から、きつねばしが見えがくれしているのですから、人間の背丈以上の高さがなければ成り立ちません。

葦は、穂が出た状態では2~3mくらいの高さに成長し、見え隠れするには十分な高さとなります。

ここで「芦」や「蘆」を使ってしまうと、見え隠れするほどの高さがなくなり、不自然な情景が浮かんでしまいます。

まとめ

本稿では、「芦」の微妙な意味や使い分けを中心に解説しました。

穂の出ているものを葦、出ていないものを芦(蘆)と区別することができれば、和歌の読み方も適切で深いものとなります。

たった一文字の違いですが、それを知っているかどうかによって解釈が大きく変わる。これは「漢字の妙味」といえるでしょう。

いわゆる「漢字を味わう」というのは、微妙な違いから世界を広げていくことだと思います。

ぜひ、漢字学習の際には心がけてみてください。

シェアする