舌に甘いと書くと「甜」という漢字になります。
どこかで見たことがあるけれども読めない、という人が多いのではないでしょうか。
本稿では「甜」の読み方、意味、成り立ちなどを紹介します。
「甜」の基本情報
「甜」の基本情報は以下の通りです。
漢字 | 甜 |
---|---|
部首 | 甘(あまい) |
音読み | テン |
訓読み | あま-い・うま-い |
「甜」は音読みで「テン」と読み、甘が含まれていることや訓読みからわかる通り「甘い」を意味する漢字です。
「甜」の成り立ち
「甜」は「舌+甘」で作られ、舌に甘いものがあることを意味する会意文字です。
舌に甘いものがあれば、甘いものが苦手でなければ「おいしい」と感じます。
このため、説文には「甜」について「美(うま)きなり。舌は甘きを知る者なり」と書かれています。
長い時間をかけて生まれた「甜」
「甜」の成り立ちを見ると、sweetの意味を持たせるために「甘」が使われていることが分かりますが、実は「甘」の本来の意味はsweetではありません。
「甘」は本来、上部に横向きに鍵を差し込む錠前の形からできた象形文字で、「差し込む」「はめ込む」を意味します。
「甘」のsweetの意味は、甘味料や生薬として知られる苷草(かんぞう・甘草)から出た意味です。
苷草の「苷」のくさかんむりが取れて「甘」となり、sweetの意味を持つに至りました。
したがって、「甘い」の意味を持つ「甜」が生まれたのも、漢字の歴史の中ではかなり後の方です。
文書などに「甜」が登場するのも漢代以降のことです。
「甜」の漢字が生まれるまでには、「甘」の意味が「差し込む・はめ込む」から「あまい」へと変化しなければならず、長い時間をかけて生まれた漢字であることがわかります。
日本でなじみのある用例
「甜」は、日常生活でもしばしば見かける漢字です。
よくみられるのは、サトウダイコンとも呼ばれる「甜菜(てんさい)」、中華料理の調味料である「甜麺醤(テンメンジャン)」などです。
甜菜はショ糖を含んでおり甜菜糖の原料にもなる、非常に甘い植物です。
甜麺醤も「中華甘みそ」などとも呼ばれる通り、甘い味を持っています。
どちらも「甜」の字を用いるに相応しいといえます。
「甜」を使った難読漢字
「甜」を用いた難しい読みに「甜瓜」があります。
「甜瓜」は「まくわうり」と読みます。
ただし、古典などでは「甜瓜」と書いて「あまうり」と読んでいる例もみられ、江戸時代に貝原益軒が著した『養生訓』には、
諸果(しょか)、寒具(ひがし)など、炙り食へば害なし。味も可也(よきなり)。甜瓜(あまうり)は核(さね)を去りて蒸し食す。味よくして胃をやぶらず。
(いろいろな果物や干菓子などは、あぶって食べると害がなく味もよい。まくわうりは種を取り、蒸して食べよ。味もよく胃に害がない)
とあります。
「まくわうり」「あまうり」のどちらも間違いではないため、両方覚えておきましょう。
まとめ
本稿では、「甜」の成り立ちや意味、3つの用法を解説しました。
「甜」に含まれる「甘」の意味の変遷を知ると、「甜」が誕生するまでに長い時間がかかったこともわかり、興味深く学べるのではないでしょうか。
漢字の成り立ちを学ぶ際には背景も学ぶよう心がけると、漢字や歴史の知識が加速度的に増えていきます。