草冠に無と一文字で書く漢字「蕪」の読み方、使い方、意味等を解説!

草冠に無と一文字で書く漢字「蕪」

くさかんむりの下に無と書くと「蕪」となります。

「蕪」の読み方・意味はお分かりでしょうか。

くさかんむりがついているのですから、植物に関係する漢字ですね。

中国と日本では意味が大きく異なり、ある意味では非常に馴染みがあり、別のある意味では全く馴染みのない、不思議な漢字です。

本稿では「蕪」の読み方から意味まで広く解説していきます。

「蕪」の解説

「蕪」の基本情報は、以下の通りです。

漢字
部首 艸(くさかんむり)
音読み ブ・ム
訓読み かぶら・かぶ

訓読みを見て、ピンときた人もいるかもしれません。

「蕪」は、野菜のかぶを意味する漢字です。

小学一年生の国語に「おおきなかぶ」が掲載されていることからもわかる通り、かぶはとてもポピュラーな野菜です。

このように考えると、「蕪」の漢字にも親しみを覚えるのではないでしょうか。

日本と中国で異なる意味

興味深いのは、日本と中国で「蕪」の意味が大きく異なることです。

それぞれの違いを見ていきましょう。

「かぶ」は日本語用法

野菜のかぶの意味で「蕪」を用いるのは、あくまでも日本語用法です。

日本の古い本を見ると、「蕪」が「かぶ」やそれに類する野菜の意味でよく登場します。

例えば、江戸時代の儒学者・貝原益軒の書いた『養生訓』にいくつか用例が見られます。

『養生訓』は日常の健康法をまとめた本です。

食事と養生法を説く中で、「蕪」は以下のように登場します。

“菘(な)は京都のはたけ菜水菜、ゐなかの京菜也。蕪の類也。味よけれども性よからず。”

(菘とは、京都では「はたけ菜」とか「水菜」とかいわれるもので、田舎ではそれを京菜とも呼ぶが、蕪の仲間(かぶも菜もアブラナ科の野菜)である。味はよいが性(性質。体に影響する要素)は良くない。)

養生訓の記載を見ると、日本における「蕪=かぶ」の用法がよくわかります。

また、益軒がわざわざ「菜というのは、かぶの仲間なんだよ」と教えていることから、当時の日本では「菜」という野菜がそれほど知られていなかったことが推測でき、これも興味深いところです。

中国では「荒地」

一方、中国では「蕪」を「荒地」や「荒れる」の意味で用います。

これは、「蕪」を分解すると分かりやすいでしょう。

「蕪」は、草(くさかんむり)の下に無(何もない)こと、つまり地中に作物が全く実っておらず、土地を雑草が覆っている荒地を意味しているのです。

孟子での用例

「荒地」としての用法は、中国古典や漢詩にしばしば登場します。

例えば、四書のひとつである『孟子』(告子章句第七)には、朝廷から罰せられる諸侯について以下のように記載しています。

“土地荒蕪(こうぶ)し、老を遺(す)て賢(けん)を失ひ、掊克(ほうこく)位に在れば、則ち譲(せめ)有り。”

(土地が荒れ果て、老人は放置され、賢人は用いられず、税金を厳しく取り立てる悪い役人が高い位についているならば、その国を治める諸侯は責められる)

陶淵明の漢詩にも

このほか、陶淵明の漢詩の中でも最も有名な「帰去来辞(ききょらいのじ。官爵を捨てて田舎に帰る気持ちを詠んだ詩)」にも、「蕪」が用いられています。

帰去来兮  帰りなんいざ

田園将蕪  田園将(まさ)に蕪(あ)れんとす

(さあ、家に帰ろう。田園が荒れ果ててしまう前に。)

この漢詩も、「蕪」を「荒れる」の意味で用いている好例です。

まとめ

多くの漢字が中国から入ってきましたが、「蕪」のように日本で独自に意味が生れた漢字もたくさんあります。

本来の意味とは全く異なる意味が生れ、歴史と共に本来の意味がほとんど使われなくなってしまうこともあるのですから、面白いものです。

現代的用法と本来の用法を比較しながら学んでいくと、漢字の世界がいっそう広がっていきます。

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