木へんに京をつけると「椋」という漢字になります。「椋」と一文字だけ見たとき、ちょっと戸惑ってしまう人も多いのではないでしょうか。
本稿では、「椋」について幅広い知識をお伝えしていきます。
「椋」の解説
まず、「椋」の基本情報を見てみましょう。
漢字 | 椋 |
---|---|
部首 | 木(きへん) |
音読み | リョウ |
訓読み | むく くら |
「むく」の読み
ここにある読みのうち、日本人にとっては「むく」の読みがなじみ深いと思います。樹木の「むくの木」や、鳥の「椋鳥(むくどり)」を表すためです。
「椋」一文字で「むくのき」と読む場合もありますし、「椋」を「むく」と読んで椋鳥を意味する場合もあります。
日本で暮らす私たちにとっては、「椋」の読みは「むく」と考えておけば、大きな間違いはないでしょう。
本来は「リョウ」
しかし、本来「椋」は「リョウ」と読む漢字です。「木」に「京(キョウ)」の音を添えて「リョウ」と読み、中国古典『説文』では「即来(チシャ)なり」としています。チシャとは、チシャノキあるいはエゴノキのいずれかを意味するとされていますが、判然としません。
このことから、「椋」は本来、日本における「むくの木」を意味するものではないことが分かります。
「椋」の使用例
ここからは、「椋」の使用例を見ていきましょう。
椋鳥(むくどり)
「椋」を使った単語に、日本人にとってもなじみ深い「椋鳥(むくどり)」があります。
一説によると、椋鳥が椋の実を好んで食べることから、「椋」の漢字を使うようになったと言われています。
「くら」という読みと人名
なお、「椋」と書いて「くら」と読むことがあります。この「くら」は、倉・藏を意味しています。 この読み方と意味は、中国や日本ではなく朝鮮で生まれたものです。
朝鮮というとハングルのイメージがあるかもしれませんが、朝鮮も元々は漢字文化圏であり、特に知識層では日常的に漢字が使われていました。朝鮮半島で漢字が使われなくなったのは、漢字廃止政策が実施された1970代以降のことです。
日本で「椋」を「チシャ」ではなく「ムクノキ」に使ったように、中国を起源とする漢字が、歴史の中で国ごとに意味や形を変えるケースがよくあります。
同じように、朝鮮でも「椋」を「チシャ」の意味ではなく、倉の意味に用いていました。このことから、日本でも「椋」を「くら」と読むことがあります。
この読み方は一般的ではありませんが、覚えておくと良いでしょう。なぜならば、人名で「椋」を「くら」と読む場合があるためです。
例えば、「椋本」と書いて「くらもと」と読む苗字があります。
もっとも、「椋本」は「くらもと」「むくもと」のいずれにも読むため、初対面の「椋本さん」の自己紹介はしっかりと聞いて、読みを正しく覚えることが大切です。