草冠に任と一文字で書く漢字「荏」の読み方、使い方、意味等を解説!

草冠に任と一文字で書く漢字「荏」

くさかんむりの下に任をつけた「荏」という漢字は、それほど複雑な漢字ではないものの、読み方に戸惑うことも多い漢字です。

本稿で、「荏」の読み方や意味、その他について勉強していきましょう。

「荏」の解説

まず、「荏」の基本情報を紹介します。

漢字
部首 艸(くさかんむり)
音読み ジン
訓読み

この情報だけでは分かりにくいので、以下で詳しく見ていきましょう。

「荏」の成り立ち

「荏」は、くさかんむりに「任」と書きます。この「任」は、日本では「委任」「任期」など、任せる意味と「にん」の読みでよく知られる漢字ですが、「任」は「ジン」とも読みます。

「荏」の「任」も、「まかせる」の意味を含むためのものではなく、「ジン」の音を含むためのものです。

「ジン」の意味するもの

「荏」の読みである「ジン」は、やわらかいこと、軟弱なことを意味します。このため、人やモノの性格・性質を表すとき、やわらかく弱弱しいことを「荏弱(じんじゃく)」などといいます。

シソの意味

このほか、「荏」はシソの一種を意味する漢字でもあります。いわゆる「荏胡麻(えごま)」のことで、健康に良いとして知られている「えごま油」は「荏」の種から油を取ったものです。

もっとも、中国古典の『説文』には、「荏」を「桂荏(ケイジン)」であるとしています。「桂荏」はシソを意味する漢字ですから、元々「荏」は広くシソ全般を意味する漢字であったと考えられます。

「荏」の使用例

「荏」は、上記のようにやわらかく弱弱しいこと、そしてシソの意味として使われる漢字ですが、そのほかに時が移ろうさまを意味することがあります。

時が移ろうさまを意味する場合、特に「荏苒(じんぜん)」といいます。「荏」も「苒」も、どちらも弱弱しいことを意味する漢字です。時間の流れに対して人間は無力であり、抗うことはできず、弱弱しく受け入れざるを得ない、といったニュアンスが含まれています。

王維の漢詩

「荏苒」のニュアンスを知るうえで、王維(唐の時代の詩人)の漢詩が参考になります。

憶我少壯時(憶ふ 我少壮の時)
無樂自欣豫(楽しみ無きも自ら欣余す)
猛志逸四海(猛志 四海に逸(は)せ)
騫翮思遠翥(翮(つばさ)を騫(あ)げて遠く翥(と)ばんと思ふ)
荏苒歳月穨(荏苒として歳月穨(くず)れ)
此心稍已去(此の心 稍(ようや)く已に去る)

(以下略)

「私がまだ若く元気だったころ、特に楽しみはなかったが、いつも自然とよろこび楽しんでいた。大きな志を抱き、翼を広げてどこまでも飛んでいけるような気持ちだったからだ。しかし、だんだんと歳月は流れていき、やがて私の心は志を失ってしまった」

王維は、俊才を謳われて出世もしたのですが、あるとき騒乱に巻き込まれて全てを失い、屈辱を味わい、囚われの身となります。その時の虚しい気持を謳った漢詩に「荏苒」が使われていることからも、「荏」がもつ弱弱しい意味が分かるでしょう。

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