草冠に時と一文字で書く漢字「蒔」の読み方、使い方、意味等を解説!

草冠に時(蒔)

草冠(くさかんむり)の下に時をつけると、「蒔」という漢字になります。この漢字は、数ある難読漢字の中でも、比較的多くの人が読める漢字だと思います。

しかし、「蒔」の本来の意味を調べてみると、意外と知られていない意味を持つ漢字でもあります。

本稿で、「蒔」の本来の意味も含めて勉強していきましょう。

「蒔」の解説

まず、「蒔」の基本情報から確認しましょう。

漢字
部首 艸(くさかんむり)
音読み シ ジ
訓読み まく

訓読みから分かる通り、「蒔」の漢字は花や野菜など、植物の種を土に散らすことを意味する漢字です。「たねまき」は「種蒔き」と書きます。

しかし、これは日本語用法であり、本来の意味は異なります。

「蒔」の本来の意味

上記の通り、「蒔」は植物の種を土に散らす行為を意味する漢字として、日本でもよく知られています。しかし、「蒔」には本来「まく」の意味はなく、「植物を植える」ことを意味する漢字でした。

漢字をまとめた中国古典『説文』にも、「蒔」について、「更(あらた)めて別に穜(う)うるなり(新しく植えることである)」とあります。

日本と同様、中国も稲作文化の国であるため、「蒔」の漢字で植えるかえる植物は、主に稲の苗を表すことが多かったようです。実際に、中国では稲の苗を上変えることを一般に「移秧(いおう・秧は稲の苗の意味)」といいますが、中国東部の江蘇では「蒔秧(じおう)」とよんでいます。このことからも、「蒔」が特に稲の苗の植え替えを意味することが分かります。

「まく」は日本語用法

日本でよく知られている「まく」の読みと意味は、「蒔」の本来の意味ではなく、日本で生まれた読み方・意味です。中国で用いられていた本来の意味とは全く関係のないものですが、日本では古くから「まく」の意味で使われていたようで、万葉集にはすでにこの意味で使われています。

日本で生まれた「まく」の意味は、やがて植物の種をまく意味だけではなく、「まきちらす」ことに対して広く用いられるようになりました。

分かりやすいのが「蒔絵(まきえ)」です。これは、漆を塗った上に金粉や銀粉をまきちらして絵や模様をあしらったもので、日本の代表的な漆工芸品です。このような工芸品に用いられていることからも、日本人が「蒔」を「まく」の意味で使ってきたことが分かります。

「蒔」と「播」

中国で「まく」の意味を表す際には、「蒔」ではなく「播」の漢字を用いていました。気「播」は、『説文』にも「穜(ま)くなり」とあり、確かに植物の種をまく意味にであったことが分かります。

植物の種をまく意味に用いるとき、日本では「蒔」「播」のどちらも使います。ただし、特に農業的な含みを持たせる場合には、種蒔きのことを「播種(はしゅ)」、その方法を「撒播(さんぱ)」「条播(じょうは)」「点播(てんぱ)」などというように、「播」を使うことが多いです。

「蒔」の熟語

「蒔」は、日本では種などをまく意味で知られる漢字です。しかし、「蒔」を用いた熟語を見てみると、「蒔」の本来の意味である「植える」「植えかえる」を意味する場合があります。

例えば、「蒔」を含む熟語に「蒔植(じしょく)」があります。これは、草木などを植えることを意味する熟語です。

日本では「蒔」は主に「まく」の意味で用い、植える場合には普通に「植」の漢字を用いておけば、日常生活で困ることはないでしょう。

しかし、あえて本来の意味や関連する知識を知ることに漢字の面白さ・妙味があるのですから、ぜひ「蒔」についても本来の意味や「播」との関係など、興味を広げていって欲しいと思います。

シェアする