水に曰と一文字で書く漢字「沓」の読み方、使い方、意味等を解説!

水に曰(沓)

水に曰と書く漢字「沓」をご存知でしょうか。普段それほど目にする機会のない漢字だと思います。

「沓」は、本来の意味があまり知られておらず、成り立ちを勘違いしやすい漢字でもあるため、本稿で詳しく学んでいきましょう。

「沓」の解説

まず、「沓」の基本的な情報から見ていきましょう。

漢字
部首 水(さんずい)
音読み トウ
訓読み くつ

上記の読みだけでは、「沓」の意味が理解しにくいと思います。

「沓」の漢字には、「重なる」の意味があり、

  • 幾重にも重なっているさま
  • 数多くの
といった意味を持ちます。しかし、本来は、
  • むさぼる
  • けがす
という意味であり、これは一般的にほとんど知られていません。

「沓」の成り立ち

「沓」の成り立ちについて、「水+日(ヒ)→沓」と解釈する人も多いです。しかし、これは間違いで、

水+曰(エツ)→沓
が正しい解釈です。

曰について

「日」とよく似た漢字「曰」は、論語で「子(シ。孔子のこと、先生の意味)曰く(いわく・のたまわく)」といった形で出てくるように、「~が言うには」という意味の漢字です。

もっとも、このような「曰」の意味は後になって誕生したもので、本来「曰」の漢字は、神様にお祈りする際の文章を収める器の象形文字です。この器を開け、中の文章を見て神託を告げたことから、「人が口を開けてものを言う」ことを意味するようになったのです。

水+曰→沓

上記の「曰」の本来の意味を知ると、「沓」の意味もよくわかります。

「沓」は、神様に対するお祈りの文章を入れた器「曰」の上に水が乗っている形です。神聖な器に水をかけている形ですから、神聖さを汚し、お祈りの効果をなくしてしまう行為です。

このことから、「沓」は本来「けがす」という意味を表す漢字です。後に派生して、曰に水をかけている様子から「重ねる」という意味を持つようになりました。

さらに、「沓」は言葉数が多いことを意味します。これも、“言葉を重ねる”ことから出た意味です。もちろん、単に多弁というよりも、口数が多く慎みがない、汚らわしいといったニュアンスを含みます。

「くつ」について

なお、「沓」の漢字を「くつ」と読むこともあります。しかし、これは「沓」の本来の読み・意味ではなく、日本で生まれた読み・意味です。 革製の靴を意味する「鞜(トウ)」の略字として「沓」を用いて「くつ」と読ませ、履物として解釈したものです。

「沓」の使用例

では、「沓」の使用例について見ていきましょう。

熟語

上記のような意味を持つことから、「沓」を用いた熟語には「怠沓(たいとう)」、「噂沓(そんとう)」などがあります。

「怠沓」は、なまけ(怠)が重なっている(沓)状態を表す熟語で、単に怠けているというよりも、とことん怠けている状態を意味します。

「噂沓」は、がやがやとうるさくお喋りする意味です。噂話のように、中身のない会話をペラペラと喋る様子で、慎みのない軽薄なニュアンスが多く含まれています。

人名

「沓」の漢字が人名に使われているケースに、義理と人情に生きる男の哀しさを描いた物語『沓掛時次郎(くつかけときじろう)遊侠一匹』の主人公・沓掛時次郎が挙げられます。

もっとも、この「沓掛」は時次郎の苗字ではなく、「(中山道の宿場のひとつ)沓掛の時次郎」を意味するもので、地名にちなんだ通り名です。

とはいえ、「沓掛」という苗字は存在し、このほか「金沓(かなぐつ、かねくつ)」や「沓川(くつかわ)」といった苗字があります。

このように、「沓」は苗字に使われる漢字です。

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