「躯」という漢字があります。これをすぐに読める人は、それほど多くはないのではないでしょうか。 単体ではあまり馴染みのない漢字ですが、単語を構成する漢字としてしばしば見かけることがあります。
本稿で、「躯」について学んでいきましょう。
「躯」の解説
「躯」の基本情報は、以下の通りです。
漢字 | 躯 |
---|---|
部首 | 身(みへん) |
音読み | ク |
訓読み | からだ |
「躯」は、体を意味する漢字です。中国古典の『説文』にも、「躯は体なり」とあります。
しかし、厳密には「体」と「躯」は異なります。体は身体全体を意味するのに対し、「躯」は部分的な意味合いを帯びているのです。
このことは、「躯」の成り立ちをみるとよくわかります。
「躯」の成り立ち
「躯」は「身」と「区」によって作られています。
「身」はご存知の通り「からだ」を意味する漢字です。
「躯」を理解する上で重要なのが「区」です。「区」には、全体を部分に分ける意味を持っています。
したがって、「躯」は「からだ」を意味する漢字であると同時に、「区」を含むことにより、身体の色々な部位の総称ではなく、それぞれの部位・区域といった意味を帯びているのです。
「躯」の使用例
上記の「躯」のイメージを掴むには、具体的な使用例を知るのが良いでしょう。
熟語
まず、「躯」を使った熟語に、「躯体(くたい)」「躯幹(くかん)」などがあります。
「躯体」は、建物の構造体・骨組みを表す熟語です。
「躯幹」は、身体の中でも特に骨格を表します。
これらの単語からも、「躯」という漢字が全体ではなく、例えば「骨組み」「骨格」といった一部を対象としていることが分かります。
古典
「躯」という漢字は、中国の春秋戦国時代以降の文献に出ている漢字です。漢字は、それよりも遥か昔から存在していましたから、「躯」は比較的新しい漢字であると言えます。
「躯」を用いた名句に、儒教の古典である『荀子』の一文があります。すなわち、
この句に、「七尺の躯」という表現があることに注目しましょう。ここでは、「七尺の体」ではなく、「七尺の躯」と書かれています。
全体が調和した状態ではなく、部分ごとにバラバラの状態、つまり「口(発言)と手足(行動)がバラバラ」といった意味を含ませるために、あえて荀子は「躯」の漢字を使ったのです。
これも、「躯」を理解する上で参考になると思います。