山の下に宗と書けば「崇」という漢字になります。
日常的に使われる漢字であり、人名に用いられることも多いためぜひ知っておきたい漢字です。
本稿では、「崇」の読み方や意味、用例を解説していきます。
「崇」の基本情報
まず、「崇」の基本情報を確認していきましょう。
漢字 | 崇 |
---|---|
部首 | 山(やまへん) |
音読み | スウ |
訓読み | たか-い |
「崇」は「スウ」と読みます。
本来は、非常に高く、険しく、雄大な山に用いられた漢字であり、説文にも「嵬(たか)くして、高きなり(険しくて高いことである)」と書かれています。
名前にもよく使われる
「崇」は、名前にもよく使われる漢字です。
「崇(たかし)」、「崇〇(たか~~、崇夫・たかお、崇晃・たかあきなど)」などの名前があるため、読み方を覚えておくと役立ちます。
敬う意味に用いられる「崇」
古来、山は霊的なものとみられており、古代インドでは聖なる山「須弥山(しゅみせん)」を中心として世界観が構築されていますし、日本の修験道も山岳信仰と密接な関係があります。
このため、高く険しく雄大な山は畏れられる存在であり、「崇」も強く敬う意味を持つようになりました。
「尊敬」より強い「崇敬」
強く敬う意味を持つ「崇」について、もうすこし詳しく見ていきましょう。
「崇」のもつ「強く敬う」意味は、「崇」が非常に高いことや峻嶮で雄大なことを意味することに由来します。
すなわち、
“非常に高い山の山頂を見上げるように、追い付こうとしてもその道のりは非常に険しく困難であり、仰ぎ見るほかない”
といった強い気持ちで敬っているのですから、この場合には「尊敬」ではなく「崇敬(すうけい)」といいます。
例えば、神様は敬うべき存在ですが、「尊敬」と表現すると安っぽい印象で違和感があります。
神様を対象とする場合には「崇敬」であり、神社では氏子の集まりを「崇敬会」などといいます。
「尊(たっと)ぶ」と「崇(たっと)ぶ」
敬う意味に通じる「たっとぶ」という言葉には、「貴ぶ」「尊ぶ」「崇ぶ」の3つがあります。
明確な区別は難しいのですが、簡単にいえば「貴ぶ」は地位や名誉を敬うこと、「尊ぶ」は徳性を敬うこと、「崇ぶ」は「尊ぶ」より強く徳性や霊性を敬うものです。
特に分かりにくいのが「尊ぶ」と「崇ぶ」の違いですが、これを理解するために具体的な用例を見てみましょう。
四書の一つ『中庸』の第五段には、以下のような文章があります。
君子は徳性を尊んで問学に道(よ)り、広大を致して精微(せいび)を尽くし、高明を極めて中庸に道り、故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知り、敦厚(とんこう)以て礼を崇ぶ。
(君子は、世の中のあらゆるものの徳性を尊んで学問に励み、自身の誠を広大・精微・高明なものに磨き上げ、偏りのない中正の道を踏み外すことなく、学んだことはよく復習して新しい知識も求め、厚いまことの心で礼を崇ぶのである。)
最初に出てくる「尊ぶ」は、聖人・庶民・高い山・低い山・神木・雑草などあらゆるものの徳性を敬うため「尊」の字を用いています。
最後の「崇ぶ」は、修養を積んで徳を磨き上げた後に学び実践していく礼を敬うため「崇」の漢字を用いています。
この対比によって、「尊ぶ」と「崇ぶ」の違いがよくわかるのではないでしょうか。
まとめ
本稿では、主に敬う意味で「崇」を解説しました。
古代、全ての山に名前がついていなかった時代には、高い山を単に「崇山(すうざん)」と呼ぶことも多かったのですが、全ての山に名前がついた現代では、「崇」を山に用いることは少なくなっています。
日常的に使われる「崇」は、多くの場合「強く敬う」意味を持っています。
この意味に注意しておけば、「崇」の漢字に出会った時に困ることもないでしょう。