木へんに土をつけると、「杜」という漢字になります。「杜」の一文字だけではあまり見慣れないかもしれません。
しかし、「杜」は難読漢字のなかでも、比較的よく使われる漢字であるため、ぜひ押さえておきたいものです。
本稿で「杜」について勉強していきましょう。
「杜」の解説
「杜」の基本情報は、以下の通りです。
漢字 | 杜 |
---|---|
部首 | 木(きへん) |
音読み | ト ズ ド |
訓読み | もり |
基本情報を見ても、イマイチよく分からないという人が多いはずです。それもそのはず、「杜」は一文字だけで使われることがあまりないのです。
「杜」の意味
今では「杜」を単体で使うことは少なくなっていますが、「杜」の一文字にもきちんと意味があります。
バラ科の植物「甘棠」
漢字の成り立ちをまとめた中国の古典『説文』では、「杜」について「甘棠(かんとう)なり」としています。
「甘棠」もほとんどの人が知らない漢字だと思いますが、「甘棠」はバラ科の樹木の名前です。古代中国では、リンゴの木を指して使っているケースがあります。ちなみに、リンゴもバラ科の植物です。
閉ざす・塞ぐ・遮る
このほか、「杜」には閉ざす・塞ぐ・遮るといった意味があります。「甘棠」とは全く異なる意味ですが、これは「杜」の金文がルーツとなっています。
金文とは、古代中国で使われた文字です。歴史の授業で「甲骨文字」を勉強したと思いますが、金文は甲骨文字の後に生まれた文字です。
金文では、「杜」の「土」の上が枝分かれしたような形になっており、これによって遮る意味を表しています。
神社の周辺の森
上記の「甘棠」や「遮る」といった意味は、古代中国で用いられていたものであり、今では使われていません。
しかし、今でも「杜」を一文字で使うケースがあります。それは、神社の境内、あるいは神社周辺の森を指して「杜(もり)」とするものです。
「森」も「杜」も、どちらも「もり」ですが、「森」は広く「樹木が密生している場所」を意味するのに対し、「杜」は「神様の降りる神聖な場所」を意味します。
したがって、その土地を鎮める神様のことを「鎮守(ちんじゅ)」、その神様がいるとされる「もり」を「鎮守の杜(もり)」といいます。
この場合、厳密には「鎮守の森」は間違いなので注意が必要です。
「杜」の使用例
「杜(もり)」を除き、今や一文字で使われなくなった「杜」に親しむには、使用例を見ていくのが一番です。
熟語
「杜」を使った熟語には色々ありますが、中でも有名なのがお酒を作る人を意味する「杜氏(とじ・とうじ)」です。
「杜氏」の「氏」は、氏族を意味しています。古代中国で、お酒を初めて作った杜康(とこう)という人がいました。この人の一族、すなわち杜氏がお酒を作って栄えたことから、「お酒を作る人=杜氏」となりました(※所説あります)。
このほかにも「杜」を使った熟語は多いのですが、どれも一般的ではありません。例えば、ホトトギスを「杜宇(とう)」「杜鵑(とけん)」などといいます。
このようなマニアックな熟語も、余裕があれば覚えておきましょう。漢詩を読むときなどに役立つことがあります。
四字熟語
「杜」そのものではありませんが、「杜」の本来の意味である「甘棠」を使った四字熟語に「甘棠之愛(かんとうのあい)」があります。
古代中国で、周という国家が栄えたことは、皆さんもご存知かと思います。立派な人物をたくさん輩出した国家ですが、そのうちの一人である召公(しょうこう)も優れた政治家として知られます。
人民は召公を大変に慕っていたため、召公の死後も、召公が木陰で休んだとされるリンゴの木を大切にしたとされます。
このため、優れた指導者や政治家を強く慕うことを「甘棠之愛」といいます。
コメント
甘棠(小リンゴ)を「土」、つまり、地神の周りに植えたという話、記録はありませんか?『杜』の字の源との関連について他に存在しないかを更に知りたいです。